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上月 司の作品



「カレとカノジョと召喚魔法」   電撃文庫   



1巻    ☆×9

どこまでも詰められた後半が凄いです。
前半はドタバタラブコメ的なノリなんですが、徐々に変わっていって、最後は完全にシリアス。
まあ当たり前といえば当たり前ですが。
後半部分、特にラストは、展開が一転二転と転がるので先が読めず、純粋に先が気になります。
主人公の口調の所為かやや緊迫感に欠けますが、それでもかなりのどんでん返しがまっています。
ひっくり返してはまた転がして、転々と留まることを知らず話が転がっていくのは見事です。
キャラも、ありきたりとも言えるベタな設定が多いですが、主人公(男)のキャラには脱帽。
最後の最後にあれを持ってくる辺り、かなりのセンスを感じました。
ただのありきたりな結末に終わるかと思わせて、一筋縄には行かない作品。
かなりの悪意と茶目っ気含まれる展開に、後半の濃さや気味のいいオチが加わって、かなりの良作となっています。
執筆期間半年ってのは伊達じゃあないです。
この良さを2巻でも発揮できているか楽しみにしつつ。
…最後に、イラストも美麗で、文章に良く合っています。
絵で上手くキャラが表現されているのですんなり物語りに入っていけます。
こういうのがイラストの利点でしょうか。ともかく一読の価値あり。




2巻    ☆×8

1巻と同じで、前半はのほほんとした平和な雰囲気で、後半で一気に詰める。
切り替えに多少の難があるも、後半の詰め、推理小説で言う解決遍の構成の良さは相変わらずです。
1巻と比べると、ハッピーエンドの割合が多いです。ハッピーエンド好きには綺麗にまとまっていていいかと。
僕はこの作品の1番いいところは、あくまでもラストの、バッドエンドとハッピーエンドの調和だと思っているので、1巻の方がすきなのですが。

前半で下積みされた土台を、後半で一気に完成まで持っていくのが、この作品の凄いところです。
後半の完成度が非常に高く、話も上手くまとまっています。
脇役のキャラも良く、キャラが活き活きと動いているので、楽しめる点は多いです。
やはり1巻がバッドエンド風味の、皮肉の効いたハッピーエンドだとしたら、2巻はハッピーエンド感が強いです。
 ハッピーエンド好きにお勧めの1冊。


3巻    ☆×7

 まあ帯にあるとおりのラブコメ。
 謎解き的な、圧倒的解決遍が無かった割には楽しめたと思います。
 結局、本編的には『雪子が遊矢の身体のことを知る』くらいしか進展が見られないので、そこが残念。
 どうこの話を完結させるかに期待したいです。


4巻    ☆×6


 期待していただけにちょっとショック。この一巻との落差はなんなんだろう。
 『詰め』というのが凄かったのは2巻までで、3,4巻はそうでもないし、話自体いまいち。
 なんかもう駄目かもしれない。でも期待して次にかける。
 まあ、こういう話も必要なんでしょうね、作者の気休めには。


5巻    ☆×8


 とんだ肩透かしをくらった全巻の不満を一気に払拭するかのように、展開はアクションへ。
 事件解決ものであった今までとは違い、怒涛の展開を見せる息つかせぬバトル。
 もうこの勢いさえあれば高望みはしないといった感じで楽しめた。
 ラスト、次への繋ぎが上手い。6巻も否が応でも読まなくてはいけなくなってしまった。




6巻    ☆×7


 今までの長い中だるみの展開にとりあえず理由がつき、せめて伏線をわかりやすくほのめかして欲しかったと思います。この人が書きたいのは恋愛とか友情とかより知略的戦いとか読み合いなんだろうとつくづく感じました。作者があとがきで言っているように、シリーズ化を考えていなかったこの作品は、1巻が絶頂で、あとはなんとか取り繕っているもののやはり期待がはずされた感が大きかったのですが、それでもやはりしっかりと堅実に完結したのには好感が持てました。多くのライトノベルのように、魔法や魔界等の設定を無駄に掘り下げていくことでページを浪費しないのもこの作者の魅力だと思います。シリーズ全体の流れを考えてから望むであろう次作に期待です。





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