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「煙か土か食い物か」   ☆×8   講談社ノベルズ


 
 第19回メフィスト賞受賞作。
 
   連続主婦殴打生き埋め事件。それが主人公の追う事件であり、主人公の母が被害者となった事件。
 その意外な解決とは……。


 分圧。読む前は始めて聞いた単語に訝しげに眉をひそめる程度の余裕はあった。でも、 これを読んだあとには、納得させられてしまった。
 たしかに、凄い。計算された文章。
 ただだらだらと一文が長いのでなく、勢いを加速させている。
 加速に加速。更なる加速によって、最高速度を保ったまま物語は進む。
 圧倒的なまでの勢いで、はっとさせられるほどのめり込んでしまった。
 個人的にキャラが好きになれなかったのだが、それでも面白いと思った。
 僕は本格推理小説というものを読まない(あるいはそういうものを読んでいてもそうだとは知らない)ので、 これがどの程度なのかは全く分からないのですが、推理部分は凄くいいと思いました。 よくある手法なのでしょうが、小さな謎をこまめに解いていくことで読者を飽きさせず、勢いも殺さない。
 僕も理由を上手く説明できないのですが、読んだ後何故か評価が上がっていく作品。
 読んでいる最中はまあまあだとか思っていたのですが、読了後に物語を思い返して、「ああ、凄い面白かったなあ」 と。
 まあ、そういう意味では読後感がいいです。凝縮された時間は、思い返すほうが楽しいということなのでしょうか。
 それなりに長いのに、一気に走りぬけたように読んでしまいました。



「暗闇の中で子供」   ☆×7   講談社ノベルス


 「煙か土か食い物か」で活躍した四郎。今回の主役はその兄で推理小説作家の三郎。  三郎が挑む現実に起こるミステリーのような事件。  なんというか、一冊としてはよくできてる。でも文章の書き方に慣れてくるとそうそう圧倒的なものを感じられない。
 たしかに面白いし、纏まっているし、それでも枠から外れていて、凄いと思うし、僕なんかには分からない文学的な価値があるのかもしれない。
 だけど一体全体どこに激しい揺さぶりを、面白さを感じろと言うのでしょう。慣れを感じるのは普通であって。変化を求めるのも普通。別に前回と全く同じだって言うんじゃない。変化が無さ過ぎる。
 というわけで、7。



「世界は密室でできている」   ☆×8   講談社ノベルズ


 涼ちゃんというのは、14歳の名探偵ルンババの姉。そして涼ちゃんはもういない。
 涼ちゃんを巡る二人の物語、そこへとさらにある姉妹が絡んでいく……。

 世界は密室でできている。つまり世界とは誰の世界か。それを考えていくとなかなかに楽しく読めた。
 このノリというか空気というか、舞城作品がもっている雰囲気を僕は気に入っているし、好きだ。
 
 その雰囲気が存分にでた作品なのではないかと思う。
 


「九十九十九」   ☆×6   講談社ノベルズ


 清涼院流水氏の『JDCシリーズ』の九十九十九のお話。

 うーむ、パラレルワールドというか、作中作というか。
 それなりに凝ったつくりではあるのだけれど、どうにも投げやりな気がする。もちろんちゃんと書かれたのだろうけれど、それでも。
 何を言ってもネタバレになってしまうのであまりいえることはないけれど、あのラストはどうかと思う。というかそもそも途中途中にミステリを入れるのは何故だろう。要らない。
 






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