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「ルカ――楽園の囚われ人たち」 ☆×7 電撃文庫
第11回電撃小説大賞『大賞』受賞作。
戦争が起き、人類は1人の少女を残して滅びた。
要人の緊急避難施設に残された少女――まゆは同じくたった一匹の犬トッピーとともに成長していく。
彼女の家族として生きるのは、どこからか、まるでまゆを育てるためだけに現れたかのような、戦争の犠牲者達。
5人の幽霊のような者達は、まゆを通して自分が失った物を埋めるため、まゆには世界が滅びたという真実を告げぬまま、
日々を過ごしていく。が――
そんなお話。
展開は強引過ぎるし、ラストもよくある感じ。
しかし、成長がよく描かれているのは良いと思います。
責任を押し付けたり、自分の過去の埋め合わせにしたりと、けっこうに自分勝手な人物ばかりそろえられて
いるし、もちろんまゆだってただ単に無邪気なだけではないという、その単純では決して無い極地での成長を書ききったのはすごい。
さらには、視点を特殊な位置にすることによる、また違った観点から見ることが出来る主人公の成長など、見所はたくさんあるのです。
です、が、展開が陳腐なのはどうにも惜しいですね。もったいない。
やはり大賞にえらばれるような文学として優れている作品は楽しむという目的で読むにはいささか硬いです。
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