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蹴りたい背中   河出書房新社   ☆×8


第130回芥川賞受賞作。

高校1年生の長谷川は、クラスメイトと馴染めないでいた。
最近では中学からの親友である絹代も、少しづつ遠い存在になりつつある。
そんな鬱屈とした日常をもてあましているあるとき、ふとしたことから自分以上にクラスで浮いている存在、にな川との接点を持つ。
にな川と接しているうちに、長谷川はにな川に対して好感を感じると同時に、いじめてやりたいと思うようになる。
そんなお話。

決して長い話ではなく、手軽に読めてしまいます。 この話の凄いところは、状況を正確に、正しく表現したただの1人称ではなく、文の端々から長谷川の嫉妬や妬みから来る皮肉などが読み取れます。
主人公の感情がそのまま伝わってくるような生々しい文章に、皮肉的な内心。
いつのまにか自分が本当にクラスでういてしまっていて、「グループなんてくだらない」と本心からか嫉妬からか自分でもわからないような気持ちを持っているかのように感じさせられます。
溶け込むように主人公の世界に引き込まれてしまいました。
決して愛情ではない、屈折した気持ち「にな川を痛めつけたい」という欲求にかられた長谷川の行動にも、何故か納得を覚えてしまいました。
文章からひしひしと『気持ち』というものが伝わってきて、感情移入してしてしまいます。
若い才能に驚嘆させられました。





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